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STUDY OF PRINT

版画と絵画 1
  直接表現法と間接表現法

複製銅版画

版画と絵画 1

表現方法には直接表現・間接表現があります。

身体運動の延長として表現する方法(油絵やドローイングなど)を直接表現法とすると、身体運動と制作過程の間に第三者を介入させる表現方法(版画など)を間接表現方法となり、このように造形表現は大きく直接法と間接法に分けることができます。

直接法は、自己完結型と置き換えて考えることができます。複雑な道具や器具使わず単純な制作過程を通して表現されるのが一般的で、その制作過程は、制作者の行為や思考と同時に進行し、終始自己の責任で完成を見ることができます。

一方、間接表現法は、相互依存型と置き換えることのできます。
銅版画では、
版という第三者の介入、また、制作過程においても特殊な器具(プレス機等)や道具を利用する技法を通して表現されるもので、その制作過程には、制作者の行動や、思考とは異なった要素が介入し偶然性や予想外のことが起こります。

銅版画について言えば、版の介入にとともに、腐食、擦り等々が制作過程に第三者として大きく介入してきます。

このことを、李禹煥は「作家にとって版画の魅力は、なんといっても版という第三者の介在により、作家の主観を越えた、より未知なるものにでくわされる可能性の強い作画だというところにある。」とも言っています。

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複製銅版画

銅版画は15世紀半ばにライン河流域の金細工師によって最初に制作されました。
れを、16世紀に入りデュ-ラ-らが彫刻銅版画を芸術作品の域にまで高めました。

当時、銅版画は注文制作による絵画に比べて画家自らが自主的に制作することが出来、且つ現金収入となるという現実的な側面がありました。

当初の銅版画は作家のそれぞれの個性に満ちた独創的なものでしたが、16世紀になり銅版画は、複製銅版画といわれる複製画としての一面を持つようになりました。このことは、写真技術が開発される時代まで続くことになります。複製銅版画は銅版画家自身の創造による銅版画でなく、本人以外の作家の原画を銅版画の技法で再現することを意味しています。

マルカントニオ・ライモンディやイスラエル・ファン・メッケネムらは複製銅版画の第一人者とも言われ、彼らが原画とするものは絵画だけでなく他の作家の版画も複製銅版画として制作しました。たとえば、マルカントニオは、デュ-ラ-の木版画を彫刻銅版画で模刻し販売するということをおこないましたが、その結果デュ-ラ-に版権侵害で訴えられることになりました。これは、画像に関する最古の著作権裁判ともいわれています。

訴訟の結果は、作品そのもの画像ではなく、署名の複製を禁ずる判決で、マルカントニオによるデュ-ラ-の版画制作自体を差し止めることはできずにサイン(モノグラム)の使用だけを禁止するというものでした。

このことは、当時は、絵画や版画そのものの複製版画制作がヨーロッパ的規模で行われていたことを意味しています。

また、版画については、その複製版画の複製が新たな複製版画を生んでいくということも行われていました。
オリジナルの版画を複製することによって複製制作された複製版画の画像は左右が逆の鏡面となり、さらに、その複製版画を複製するということが行なわれていました。

一方、ラファエロは自分の絵画をマルカントニオに複製銅版画として制作させることにより自分の作品の存在をヨーロッパ中に広めることにつながりました。そのことは、自作の絵画を普及させることにより作品の市場価値を高めることにもなりました。
 このように、複製銅版画は「ルネサンス美術を広めたニュ−・メディア」としての一面も持つことにもなったのです。


イスラエル・ファン・メッケネムによるデュ-ラ-の銅版画「散歩」の複製銅版画。彼はマルカントニオとは異なりデュ-ラ-のサイン(モノグラム)は使用せず枠外にIsrahel Mと記入しています。イスラエルの作品はデュ-ラ-の作品に比べて風景の連続性や遠近感が欠如しており、自然さが欠如しています。

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